もはや「笛吹けども踊らず」といった状況だ。新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大が止まらない。島根、鳥取両県の累計感染者数がそれぞれ千人を突破した▼全国知事会は夏休み中の都道府県境をまたぐ旅行や帰省を原則中止するようメッセージを発信したが、都会地の人にとってはどこ吹く風。県内で擦れ違う県外ナンバーの車の多さに閉口する▼政府は17日、緊急事態宣言の対象地域を13都府県に拡大することを決めた。だが「宣言慣れ」の手詰まり感が漂う。言うことと行動が食い違う「言行不一致」も求心力を失う一因▼首相が国民に行動自粛を求める中で東京五輪は開催され、SNS上では「国境をまたいだ運動会が中止されないのはなぜ」と皮肉の声が相次いだ。東京暮らしの国会議員は衆院選を見据えて選挙区に〝帰省〟し、あいさつ回りに精を出す。家族同士か4人以下での会食を呼び掛ける政権の呼び掛けから逸脱し、5人で都内の日本料理店に集まって会食したことを批判された与党幹部は「会食ではなく打ち合わせ前の『黙食』」と主張したが、誰も納得しまい▼自民党の青木幹雄元参院議員会長がかつて唱えた法則によると、内閣と政党の支持率の合計が50%を切ると政権は倒れる。一部の世論調査では50%台前半に落ち込んだとのデータもある。不信を招くばかりで、新型コロナと同様に政権浮揚の特効薬が見当たらない。(文)