医療現場の窮状を訴える飯田博院長=浜田市浅井町、浜田医療センター
医療現場の窮状を訴える飯田博院長=浜田市浅井町、浜田医療センター

 新型コロナウイルス感染急拡大で、患者を受け入れる島根県西部の中核病院・浜田医療センター(浜田市浅井町)は17日現在、専用病床24床が埋まり、受け入れを断る事態になった。インタビューに応じた飯田博院長は「崩壊の一歩手前」と述べ、住民や行政に危機感の共有を強く求めた。 (聞き手は西部本社報道部・勝部浩文)

 現場はぎりぎりの状況だ。専用病床はもともと19床あり、12日に県の要請で24床まで増やしたが、すぐに満床になった。増床は新たに医療スタッフをそろえる必要がある。これ以上増やすには院内の他病棟から引っ張ってくるしかない。

 一般病棟のスタッフをコロナ対応に充てれば、早期がんなどの手術の延期や検査入院の中断といった対応を余儀なくされる。これ以上感染者が増えるとコロナ以外の患者を含め、救える命が救えなくなる。首都圏で今起きている状況が、県西部でも起きかけている。

 医療現場の危機感が、行政にも十分に伝わっていないと感じる部分がある。例えば、県が公表する病床使用率は、現場の逼迫(ひっぱく)状況を反映していない。県全体にまとめた数字で地域ごとの状況が分からない上、感染者が増え始めると、県の増床要請に各病院が何とか応じるため、率を計算する際の分母が増え、数字上は小さく抑えられるからだ。実際の逼迫度は、増床前の段階で限界に近い。

 県は県民に不安を抱かせたくない思いがあるのかもしれない。ただ、そのことが、かえって医療現場と地域住民の間で危機感に大きな温度差を生んでいるように思う。もう少し情報発信を工夫できないだろうか。

 当センターの専用病床は18日にはどうにか29床に増やす予定だ。最近は家庭内での感染が多い。若い人が感染地域に行き来したり、県外から帰省したりして広げている。どうか「自分は大丈夫」と思わず、あらためて感染対策や自身の行動に気を付けてほしい。