「泥」という文字が付く言葉はなぜか印象が悪い。「泥をかぶる」は不利を覚悟の上で役目を引き受ける、「泥を塗る」は面目を失わせる、「泥を吐く」は問い詰められて隠していた罪状を白状する-といった具合。盗っ人を指す「泥棒」が代表格か。
とはいえ島根大付属幼稚園(松江市大輪町)の園庭に完成したばかりの「どろんこハウス」を訪ね、印象ががらりと変わった。平仮名の「どろ」だからではない。顔や体操服を汚し、泥だらけになって遊ぶ園児たちの表情がきらきらして、ほほ笑ましかったからだ。
「どうぞ、食べて」。男の子が差し出したのが、泥をこねて作った泥団子。並んでいたこれまでの“力作”を見ると、まん丸のもの、でこぼこのもの、大きさもまちまちだ。「ここがたべるばしょです。どうぞすわってください」。園児が手書きした、かわいらしい案内表示も見つけた。
「泥はいくらでも形を変えられる教材」と太田泉副園長。一人一人の独創性を育むのにはうってつけだ。泥や土に触れる体験は「自然を守ろう」という意識にもつながるだろう。
同園では泥遊びを長年取り入れているが、屋根付きのハウスができたことで、天候に左右されることも減った。家族にとってはどろどろに汚れた体操服を洗う機会が増えて大変だろうが、遊び疲れて「泥のように眠る」子どもの寝顔を見ると「さあ頑張るか」という気になるのでは。(健)