防災バッグの中身。いつ起こるか分からない災害に備えたい(資料)
防災バッグの中身。いつ起こるか分からない災害に備えたい(資料)

 四国の大学に通う友人の娘が来月4日に島根に帰省するという。「7月5日に日本で大災害が起きる」との予言を信じているため。同様に“脱四国”を企てる友人が複数いるとか。

 この予言、発端は漫画家の予知夢だ。1999年発刊の作品で東日本大震災を予言したとして注目された作者が、2021年の作品に、同年7月5日に見た夢の内容として「日本とフィリピン間の海底が破裂し大津波が押し寄せる」「その災難が起こるのは2025年7月」などと記載したことがインターネットや口コミで広まった。

 科学的根拠のない「漫画の話」では終わらず、観光産業に波及。特に香港では交流サイト(SNS)を通じて話題になり、今春から日本への旅行需要が減少している。航空便の停止や減便が相次ぎ、米子-香港間で定期便を運航する航空会社も太平洋側の仙台、徳島を結ぶ2路線で減便。米子便は維持されているが先行きは不透明だという。

 当の作者は先日新刊を出版し、7月に大災害が起きる可能性は取り下げなかったものの、具体的な日付の「7月5日説」は否定した。こうした予言を信じがちな「地震大国」の日本は一方で、昔から言葉に魂が宿り不思議な力が働くと信じる「言霊の幸(さきわ)う国」でもある。

 不安や恐ればかりを口にすれば日本全体がその気にとらわれてしまいそう。予言は備えを強化する好機とし前向きな声がけで乗り切りたい。(衣)