水木しげるさんの「娘よ あれがラバウルの灯だ」の直筆原稿(鳥取県立図書館所蔵)
水木しげるさんの「娘よ あれがラバウルの灯だ」の直筆原稿(鳥取県立図書館所蔵)

 境港市出身の漫画家、故・水木しげるさんのエッセー「娘よ あれがラバウルの灯だ」の直筆原稿が、鳥取市尚徳町の鳥取県立図書館で展示されている。太平洋戦争の従軍経験を踏まえて、戦争の悲惨さや現地住民との交流をつづる。タイトルを変更し、伝えたい思いを打ち出したことがうかがえ、戦争の記憶の継承に努めた横顔がしのばれる。

 雑誌「中央公論」1973年9月号に載ったエッセーの原稿で同館が所蔵。400字原稿用紙22枚からは推敲(すいこう)の様子が分かる。

 水木さんは戦時中、パプアニューギニアのラバウルに赴いた。人気の妖怪漫画のほか、戦記漫画を精力的に描き「戦死した仲間が書かせるのだ」などと著書で熱意を明かしていた。

 原稿に見える元のタイトルは「楽園(ラバウル)にかえる」。おおらかに生きる現地住民の生活を気に入っていた水木さんらしい。それを変えたのは、次世代に戦争のことを伝えたいという思いが勝ったためかと見る者に想像させる。

 そのほか、県民の手記など約120点が並ぶ「戦後80年 県民の継承のいとなみ」は9月23日まで。会期中の休館は25、31日、9月11日。

(桝井映志)