開台40周年を迎えた日原天文台=島根県津和野町枕瀬
開台40周年を迎えた日原天文台=島根県津和野町枕瀬

 織り姫とひこ星が夜空で逢瀬(おうせ)する天の川の話をすると、時季外れと言われようか。旧暦に基づく、もう一つの七夕がある。国立天文台が「伝統的七夕」と呼び、広報している。今年はおとといの29日。夜空にきらめく鮮やかな星たちがはっきりと見えた。

 朝晩は幾分か過ごしやすくなり、「秋の日は釣瓶(つるべ)落とし」と言うようにあっという間に日が沈む。大気中の水蒸気が減るため星の見えが良く、天体観測にうってつけの季節だ。せっかくなら大型望遠鏡を覗(のぞ)いてみるのもいい。

 島根県津和野町枕瀬の日原天文台はきょう開台40周年を迎える。節目を知ってか、夏休み中は子どもの時以来と言って訪れる帰省客もいたそう。そのまた子どもを連れて。

 当時、自治体が設置する国内初の公開天文台として話題を呼び、翌年にはハレー彗星(すいせい)の大接近があった。空前の天文ブームが去り、運営に難儀しながら歴史を刻んだ小さな天文台はいぶし銀の輝きを放つ。今月の記念イベントで、事業を主導した旧日原町の木村治町長の思いが自著を引用して紹介された。

 <暗い夜空を毎夜刻々として移動する天体に興味を持たせることは、科学する心を子どもに呼び起こすことであり、天体の不思議さの中に、今は薄れかけている自然に対する畏敬の念を呼び戻すことになる>(「我らに山河あり」)。今夜はスマホを見るのをやめて、輝く星たちを見上げてみてはどうだろう。(史)