世界陸上男子3000?障害決勝のレースを終えた三浦龍司選手=15日、国立競技場
世界陸上男子3000?障害決勝のレースを終えた三浦龍司選手=15日、国立競技場

 フリースタイルスキー女子モーグル元日本代表の上村愛子さんは、記録より記憶に残る選手の一人だろう。5大会連続で冬季五輪に出場し、表彰台を期待されながら届かなかった。五輪の順位は7、6、5、4、4位。4度目のバンクーバーで4位に終わり「なんでこんな一段一段なんだろう」と涙ながらにつぶやいた。

 陸上の世界選手権東京大会に出場した男子3000メートル障害の三浦龍司選手(浜田市出身)も同じ思いかもしれない。今季記録は世界3位。足を痛めながらの8位入賞は誇れるが、この種目で日本勢初の表彰台を狙っていただけに「メダルに届くかと思った」。一瞬だけ首を振るしぐさに悔しさがにじんだ。

 可能性を感じさせた8分半だった。残り150メートルで3番手に浮上。最後の接触がなければメダル争いに絡んだだろうが、第一人者らしく「難しさや面白さが伝わった」と一切言い訳をしなかった。

 東京五輪7位に始まり、世界選手権ブダペスト大会6位、パリ五輪8位に続く4度目の入賞。減速が少ないハードリング技術を武器に一段ずつ進化している姿を見せた。

 上村さんは五輪後に「難題のない人生は無難な人生。難題のある人生は有り難い人生」とブログにつづった。後者の道を歩む三浦選手にとって、この先の一段を駆け上がるには途方もない努力が必要だろう。ただ、23歳の俊英には難題を乗り越えるだけの十分な若さがある。(玉)