2年前、黒柳徹子さんの新著『続 窓ぎわのトットちゃん』が発行されると聞き、エッセイストの酒井順子さんは「とうとう徹子さんも老い本を出されるのか」と思ったそうだ。老い本とは、酒井さんいわく「過去を振り返りつつ老いを見つめる本」のこと。
ところが予想は見事に外れた。40年以上前に大ベストセラーとなった『窓ぎわのトットちゃん』の完全な続編で、戦前から、俳優の仕事に就きさまざまな経験をするまでの「トットちゃん」こと徹子さんの前半生記。「高齢者としての黒柳徹子は登場しない」と、酒井さんは昨年刊行した新書『老いを読む 老いを書く』で触れている。
先月で92歳になった徹子さん。1976年に始まり、来年50周年を迎える冠番組の『徹子の部屋』については、かねて50年は続けたいと思っていたが、「最近は100歳まで続けたいと思うようになった」とも。気合が満ちあふれ、本当に実現できるのではと思えてくるから不思議だ。
徹子さんの長寿の秘訣(ひけつ)を、酒井さんは「老い本を書かないでいること」と表現する。何歳になっても自分の限界を定めず、未来だけを見続ける-。老い本を書くなんて発想は浮かんでこないだろう。
人生の終わりに向けた終活も「全く考えていない」と徹子さん。生涯現役は凡人にはまねできない、まばゆいほどの生き方だが、未来志向は参考になりそうだ。きょうは「敬老の日」。(健)













