1970年開催の大阪万博をきっかけに普及した商品の一つに缶コーヒーがある。当時は喫茶店や瓶入りで飲むのが一般的だった。
茶・白・赤の3色缶でおなじみの「UCCミルクコーヒー」は69年に“世界初”の触れ込みで発売されたが、売れ行きはいまひとつ。翌年の万博会場で来場者が飲んでいたことで注目され、人気に火が付いた。交流サイト(SNS)時代で言うと、コーヒーを手軽に飲む姿が映(ば)え、バズったのだろう。
ロングセラーとなった商品は今年、万博が再び大阪で開かれるのに合わせ、発売当時のデザインと味を再現した復刻缶が限定販売され話題を呼んだ。懐かしむのはさておき、一言もの申したい方はおられよう。
そう、3色缶の世界初より先に、世に出た缶コーヒーが確かにあった。ちょうど60年前の65年9月14日、東京の日本橋三越本店で売り出された「ミラ・コーヒー」。浜田市出身の三浦義武(1899~1980年)が開発した。知る人ぞ知る、缶コーヒーの生みの親である。顕彰活動で味を受け継ぐ地元有志たちがきょう、浜田市内で記念イベントを開くと本紙に載っていた。
当時使われていたものと同じ大型のネル(布袋)で抽出し、缶コーヒーの味を再現するという。三浦は店で淹(い)れるのと変わらない味や香りと、劣化しない品質を追い求めた。その深い味わいが、偉人の労苦とひたむきな情熱を教えてくれるに違いない。(史)













