感染力が強い変異株「デルタ株」を甘く見ていたようだ。東京五輪開幕の1カ月前、6月23日付の小欄で「仮に7月から9月末までの新規感染者が1日平均3千人、計約28万人に達したとしても―」と書いたが、7月からの実際の感染者数は既にその2・5倍の約70万人。島根県の人口を上回り、1日平均では1万人を超える▼当時の新規感染者数は、1週間の合計で東京が3千人、全国でも1万人程度だったため、1日平均の試算を5千人にするか3千人にするか、迷いながら書いた。その見込みを大幅に上回る爆発的な感染拡大になった▼死者数は2カ月間で1300人近く。7月は抑制されていたが、盆明けからは増加が目立ち、重症者数も過去最多を更新し続けている。医療の逼迫(ひっぱく)が続き、目が届きにくい自宅療養者がさらに増えると、この先が懸念される▼そんな大変な時期に国会が「夏休み」でいいのかと思う。そういえば、昨年末の感染拡大期も閉じていた。今回は東京五輪・パラリンピックの時期だったとはいえ、自民党総裁選と総選挙が近いせいか、コロナ対策に腰が定まっていないように映る▼緊急事態宣言の繰り返しで「コロナ慣れ」が指摘され、効果が薄れている状況を変えるには、政府や与党の必死さが国民に伝わらないと難しい。昔から「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」という。困難なときこそリーダーの覚悟が問われる。(己)