「エシカル消費」という言葉を聞く機会が増えた。なじみのない響きに「また片仮名語か」とうんざりする人もいそうだ。「倫理的な、道徳的に正しい」といった意味の英語に由来し、「倫理的消費」と言い換えられる。人権や社会、環境に配慮した消費行動を指す。地球温暖化が進む今、重要になってきた▼人気ドラマの愛称をもじった「飛び恥」も倫理的消費行動の一つだ。二酸化炭素(CO2)の排出量が多い飛行機での移動は恥であるとの考え方で、鉄道など他の交通手段を選ぶ。近年ヨーロッパから広まった▼もっと身近な乗り物の自動車で考えてみる。ガソリン車で不要不急の外出は石油資源の浪費とCO2の排出を招くため、気が引ける。「趣味はドライブ」などと大きな声では言えなくなりそうだ▼電気自動車なら問題解消というわけでもない。原発から生み出される電気を使うとすれば、無事故で稼働したとしても、何万年もの管理が必要な高レベル放射性廃棄物の問題に思い至る人もいるだろう。将来、車を持たない倫理的消費者が増えるかもしれない。となると鉄道は地域に残しておくべき社会資本だとも思えてくる▼コロナ禍で新たな日常を模索するこの機に、一人一人が倫理的消費の在り方を考えてみることは価値がある。そしてできるところから実践していけたら素晴らしい。「いい具合に」の出雲弁から「えしこに消費」だ。(輔)