山陰両県でも新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、最前線で対応する医療従事者からは、菅義偉首相がもっと強いメッセージでリーダーシップを打ち出して、国民の行動変容を促してほしかったとの声が相次いだ。コロナ対策の評価は短期間では定まらないとして、誰がトップになってもワクチン接種など地道な対策を続けるしかないとの感想も聞かれた。

 松江市内にある訪問看護ステーション。コロナ禍で入院を避けた在宅患者への訪問看護のニーズが増えたり、週末のワクチン接種に協力したりするなど、フル回転の業務が続く。

 看護師の斉藤美喜子管理者は勤務中に、首相の退陣意向を知った。「安全・安心」を連発した東京五輪開催を巡る強気な発言、緊急事態宣言の不自然な打ち切りや発令の繰り返しに違和感があったといい「医療現場からの声をもっと拾ってほしかった」と感じている。

 過去の行政改革で人員を減らされながら、コロナ対策で主戦場になった保健所関係者からも、医療への目配りが足りなかったとの声が漏れた。山陰のある保健所長は、一時期「Go To トラベル」の推進など全国で人の移動を促したことを念頭に「(経済など)多方面への配慮が必要なのは分かるが、全てにおいて一貫性がなかった」と指摘した。

 ただ、誰がトップになってやっても困難と言われたコロナ対策。益田市医師会の松本祐二会長は、コロナ患者の死亡率が世界平均より低いことから「他国に比べひどい状況とは言えない。政策の最終的な評価は3年から5年くらい経過しなければ分からない」と述べ、首相の一連の対策に一定の評価をした。

 ワクチン接種や在宅療養のケア充実など、政治がきちんと役割を果たすべきなのはこれからで、島根県の感染症指定医療機関・大田市立病院(大田市大田町)の島林大吾事務部長は「限られた医療資源で目の前の患者に対応しなければいけない状態は変わらない」と強調。自民党総裁選、衆院選と政治日程が続く間も国と地方自治体がきちんとコントロールして、コロナ対策を推し進める重要性を説いた。