国内で五輪が開催された年は首相が退陣するジンクスは生きていた。菅義偉首相が、今月末の自民党総裁任期満了に伴い、辞任する意向を表明した。池田勇人(東京五輪)、佐藤栄作(札幌五輪)、橋本龍太郎(長野五輪)元首相に続く。コロナ対策への国民の不満が強く党内も「四面楚歌(そか)」の様相だったため観念したのだろう▼ただコラムを書く立場からすると複雑な気持ちだ。1年前の菅首相誕生時には「苦労人」「実務派」などの言葉を使って「期待したい」ふうの書き方をした。それが、やがて評価が変わってしまった▼菅首相だけではない。長期にわたった安倍晋三前政権や、その前の旧民主党政権ができた際も同様だ。米国では「ハネムーン期間」と呼び、大統領就任後100日間はメディアが好意的らしいが、日本も例外ではない▼しかし、期待し過ぎなのか毎回、最後は裏切られた気持ちになる。もちろん、夫婦の場合でも、年数がたてば「優しさ」は「優柔不断」に、「頼もしさ」も「独断」や「わがまま」に変わることはあるが、裏切られたとの思いがするのは、よほどのこと▼後任総裁選びが終われば、総選挙が待ち受ける。どんな政権になるにせよ、注文が一つ。夫婦間のように、決して裏切らず「終わり良ければ全て良し」と笑い合える政治を目指してほしい。そうすれば、薄らいでいる政治への信頼も少しは取り戻せるだろう。(己)