自民党総裁選の各候補は、新型コロナウイルス対策で論戦を展開している。ロックダウン(都市封鎖)を可能にする法整備や、入院ベッドなど医療提供体制の確保を巡って持論を主張。ワクチンが行き渡った後の行動制限緩和でも応酬を繰り広げる。冬の流行「第6波」も見据え、支持拡大に向けた政策アピールに躍起となる。
▽変 異
「早期の人流抑制が大事だが、念のために法改正を検討したい」。河野太郎行政改革担当相は23日の討論会で、さらに感染力の強い変異株が生まれる事態などに備え、ロックダウンを可能とする法整備に言及した。
法整備が必要との立場は、岸田文雄前政調会長と高市早苗前総務相にも共通するものの、微妙な温度差がある。岸田氏は「人流抑制のための法改正も考えたい。ただ欧米のような外出禁止を行い、違反すると罰金を取る厳しいロックダウンは、私たちの国にはあまり適していない」との見方を示した。高市氏は「与野党の合同チームで合意して法律を作っておく」と述べ、具体的な手続きにまで触れた。
野田聖子幹事長代行だけはこれまでも不要論を唱えてきた。政府が対策の重要性の説明を尽くし「皆さんの協力をいただいて(人流抑制に)取り組むべきだ」と力を込めた。
▽強 制
各候補は感染拡大による病床逼迫(ひっぱく)を防ぐため、独自の機動的な病床確保策を訴えてきた。河野氏は「自衛隊の力を使って臨時病院を速やかにつくれるようにする」と掲げる。岸田氏は「感染症中核病院」を指定し診療報酬を優遇するとともに、緊急時は国が半強制的に確保する仕組みを提唱。「応じない場合は罰則も考える」と主張する。
より強力な措置を打ち出すのは高市氏。「国や自治体が医療機関に病床確保を命令できる法案を次期通常国会に提出する」と明言した。野田氏は暫定的な「サブホスピタル」を用意し軽症、中等症の人を受け入れ、重症化を防ぐという。
▽責 任
政府がワクチン接種が進んだ後に目指す行動制限の緩和に対しては見解が割れる。「若い人たちには行動制限は精神的に厳しい」。野田氏は22日のTBS番組で、酒類提供などの制限を緩和する時期を質問され、三つの選択肢から最も早い「11月ごろ」を選んだ。
岸田氏は「経口治療薬が広がるのは年末の段階」と述べ、制限緩和はその後の来春との考えを示した。高市氏も「せめて卒業式や謝恩会までには何とかしたい」と、目標を同じ時期に置いた。
河野氏は科学的な議論を求め、時期に関し回答を拒否。「前提のデータもなく『こうしたい』と言うのは責任ある政治とは思えない」と語った。