出雲が舞台の新作アニメ映画『神在月のこども』がきょう封切られる。詳しくは本紙ラッピング紙面をご覧いただきたい。上映は島根県を含めて全国約190館。数年前に公開され、社会現象化したアニメ映画の規模を上回る注目度だ▼劇中テーマの「ご縁」を事前取材で体感した。2年前に東京都内で松江市出身のプロデューサー・ロケーション監督の三島鉄兵さん(42)に出会った。当時イメージ画像のみだったが、熱に感化され、昨夏から本紙でコラム「ご縁の成る記」を掲載、進捗(しんちょく)を伝えてもらった▼制作主体の有限責任事業組合は三島さんを含め3人だけ。しかも映画制作の経験はない。スポンサー集めからロケ地手配に至るまで担った三島さんの役目は「全ての人の地熱を熱し続ける」こと。映画を世に送り出す苦労は想像を絶する。完成まで約8年は魂を削る日々だっただろう▼残る2人も島根と縁がある。アニメーション監督・白井孝奈さんは祖母が江津出身。原作・コミュニケーション監督の四戸俊成さんの先祖は小泉八雲と交流していた▼コロナ禍で打撃を受け映画界の市場は過去10年で最低となり、『神在月~』の公開も1年ずれ込んだ。この間、支えになったのは三島さんらが生んできた数え切れないご縁の力だ。待ち続けた島根の観客の思いもその一つ。きょうからの全国公開でまた新しい島根(出雲)とのご縁が生まれ始める。(築)