新型コロナウイルス対策の専門家を代表する「顔」の意外な格好に驚いた。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長。普段は国会や政府会合でのスーツ姿がおなじみだが、開設したインスタグラムのアカウントでは真っ白なTシャツというラフな姿を投稿。胸に付いた「ねえねえ尾身さん」とのハッシュタグ(検索目印)が目を引く▼科学的な知見から政府に助言を続ける一方、コロナとの闘いは長期化。科学だけでは判断できない社会の問題について、国民の率直な声を政府に届けるため、インスタで意見を募りたいとの思いで始めたそうだ▼コロナ対策を巡っては、感染防止と経済活動のどちらを優先すべきかといった議論に象徴されるように、考え方の違いから対立が起きがち。しばしば「分断」の構図が生まれる。インスタには答えを求めて、収束の見通し、ワクチンなどについて素朴な疑問が集まる▼さて、こちらの「顔」はどうか。自民党総裁選を経て、100代目の首相に指名された岸田文雄氏。安倍、菅両政権では、森友学園を巡る公文書改ざん、桜を見る会問題、日本学術会議会員の任命拒否などで国民の政治不信は増幅した▼意外性は求めない。岸田氏は「聞く力」が売りだとアピールする。であるならば、説明責任をきちんと果たし、国民が「ねえねえ」と言ってみたくなるような信頼と共感を取り戻す政治を望む。(森)