取引先へ配達するおしぼりを準備する野津照己社長=松江市西川津町、城北ドライ
取引先へ配達するおしぼりを準備する野津照己社長=松江市西川津町、城北ドライ

 9月初旬、ひっそりとした松江市内の夜の繁華街。城北ドライ(松江市西川津町)の野津照己社長(56)は、おしぼりを供給しているスナックへ集金に回った際、なじみの経営者から切り出された。「お客が減ったから、これからは自前で用意するよ」

 ショックと同時に「またか」とうなだれた。取引中止は今年に入り10件を超える。取引先は飲食店のほか、宿泊施設など市内約300店。洗濯のため回収する日々のおしぼりの量を見れば、新型コロナウイルスの打撃度合いや影響の広がりが分かる。

 取り扱い枚数は一時、感染拡大前に比べ9割減となり、昨年7月にはコロナ対策の制度融資を活用し4千万円を借り入れた。

 来年6月に返済が始まる。回復の道筋がいまだ見えない中、「もう少し借りておけばよかったのかどうか」と思い悩む。同時に飲食業などに偏った支援の在り方に不満がこみ上げてくる。網からこぼれ落ちることがないよう「納入業者を含め幅広い支援が必要だ」と声を絞り出した。

 倒産増加の恐れ

 実質無利子・無担保で貸し付ける国のコロナ融資で島根県内の保証承諾は県分を合わせて9400件、承諾額は1760億円を超えた。資金繰りに窮した多くの企業の支援につながり、帝国データバンクの調べでコロナ関連倒産は島根11件、鳥取5件にとどまる。

 ただ影響が長引けば、息切れが起きかねない。同社の豊田貴志松江支店長(48)は「返済時期を迎えると、倒産が増加する恐れが高まる」と指摘する。

 傷が深くなる前に「退出」を選ぶ企業もある。金城タクシー(浜田市金城町七条)は昨年12月末から休業に入った。川合克志社長(64)は旧事務所のドアに貼った休業の張り紙を見つめながら「コロナ融資もあくまで借金。これ以上続けると家族や社員に迷惑が掛かると思った」と決断の理由を語る。

 引き継ぎ手待つ

 小型2台に加え、10人乗りジャンボタクシー1台を運行。県外を周遊観光する貸し切りを稼ぎ頭として地域の足を守ってきた。そこにコロナが直撃し、昨年の売り上げは1千万円減の700万円まで落ち込んだ。

 休業後は古巣のバス会社に請われ、臨時職員として働く。会社を畳まないのは、現れるとも分からない引き継ぎ手を待つためだ。

 コロナ危機を乗り越えられたとして、人口減少が進む山陰でこの先も事業を続けていけるのか。立候補者は末端まで行き届く景気対策とともに、持続可能な地域経済の将来展望を示す必要がある。

  (政経部・久保田康之)