東京都と神奈川県の境を流れる多摩川に姿を見せたアゴヒゲアザラシの「タマちゃん」。横浜市の鶴見川や帷子(かたびら)川へと移動し、コンクリートの護岸に上がって日なたぼっこをしていた。もう19年も前の出来事だ▼人口集積地だけに見物客が大勢集まり、報道陣も駆け付けた。応援ソングができ、関連商品も発売。常連たちがファンクラブを結成したほか、謎の団体が捕獲を試みる騒動も起きたが、2004年4月に埼玉県朝霞市の荒川で目撃されたのを最後に姿を消した。「タマちゃんフィーバー」と呼ばれた現象は実に1年8カ月も続いた▼動物園や水族館にいる動物でも、ひょっこり身近に出現すると不思議にも興味をくすぐられる。9月下旬に境水道の松江市美保関町側に出掛けた際、タマちゃん現象のような気配を感じた▼看板も何もない護岸に幅広い世代の人が連れ立って訪れる。一体、何が目的なのかといぶかしく思ったが、水道の中央付近に胴体が見えて謎が解けた。赤いブイの周りに居着いたイルカがお目当てだ▼本紙が出現を報じたのは5月3日。2頭は昨年末から確認されているという。時間がたち、どこかに行ったと思っていた。気まぐれなイルカを見るには時間がかかる。すぐに見えたらかなり幸運だ。コロナ禍の人類に癒やしを与えるようだが、周囲の魚は怖がって逃げてしまう。愛称が付く前に海原への移住をお勧めしたい。(釜)