単身赴任で、夜遅くなると支局に近い飲み屋に食事に行く。60代の女性店主は石見の人らしく竹を割ったような性格で、話を聞いていると、日ごろのうさを忘れる。

 その「おばちゃん」が最近、2度病に倒れた。仕入れ中に、突然悪寒がして気を失った。「齢(とし)のせい」と言う。それとも昨年来、新型コロナウイルスの影響で客足がめっきり減ったことで、長年の心労がここに来て出たのだろうか。

 店があるJR江津駅前も地方創生の一環で再生に取り組んできたものの、人口減少で疲弊が募る。

 店は、一人で育てた息子が深夜に来て、片付けを手伝う。将来は店を改装し、息子に継いでもらうのが「おばちゃん」のささやかな夢だ。食器、酒の瓶や段ボールが雑然と積まれた小さな店。おそらく政治家たちが足を向けることはないだろう。

 それでも、国民の声を聞き、市民に寄り添うのが政治と言うのなら、権力闘争をしている暇はない。険しい淵にある暮らしを守るため、1票を投じる。(江津支局・福新大雄)