農業後継者の不足が叫ばれて久しい。地方の商店街では事業承継が問題になっている。近年、地域によっては町村議員のなり手不足も伝えられる。そんな心配がなさそうなのは、2世タレントが目立つ芸能界と国会議員くらいだろうか▼早くも第2次が発足した岸田文雄内閣では、首相と20人の閣僚のうち、首相を含め10人は身内に政治家がいた。自民党の四役や副総裁、本部長などを見ると父親の名前が浮かぶ人が何人もいる。ちなみに官僚経験がある閣僚は4人だ▼農業や商店が高齢化と後継者難に悩むのは、仕事に比べて収入が多くないせいもあろう。そういう状況なら何が何でも子どもに、というわけにはいかない▼「門前の小僧習わぬ経を読む」のような環境は、農業や商店も、芸能界や国会議員も同じはず。それなのに、一方の「仕事」の方が魅力的に映るのはなぜだろうか。志や野心も関係するだろうが、魅力がなければ官僚を辞めてまで転身を考えないはずだ▼世襲が一概に悪いとは言えないし、否定すると逆差別になる。ただし、あまり多いと、まるで「家業」のように見えてしまう。そうなれば、江戸川柳の「売り家と唐様で書く三代目」ではないが「不肖の政治家」も出かねない。遺伝的には、初代が優れていても代を重ねるごとに薄まる。先の衆院選でも世襲当選者が約4分の1を占めたようだ。それを多いと思うかどうかだ。(己)