島根、広島、山口の3県が2020年に実施した西中国山地に生息するツキノワグマの頭数調査で、推定生息数が1307頭(中央値)だったことが、分かった。過去4回の調査とは手法が違うため単純比較はできないが、これまでで最も多く、専門家は保護が進んだために増加したとみる。クマによる人身被害も出ており、保護と駆除のバランスが求められそうだ。
調査は1998~99年に始め、5年に1回実施。過去4回は、奥山でクマを捕獲し、マイクロチップを埋め込んで放し、翌年に再び捕獲した個体から推定する「標識再捕獲法」で調べた。今回は調査エリアを広げ、固定カメラを使って月ノ輪の模様から識別する手法に改め、精度を上げた。
20年調査では767~1946頭が生息すると推定した。中央値は1307頭で、単純比較はできないが前回より457頭増。メスや親子の捕獲位置からクマが住み続ける地域を示す「恒常的分布域」は前回と比べ200平方キロメートル広がり8200平方キロメートルとなり、県鳥獣対策室は生息数が増加傾向にあるとみる。
西中国山地のクマは生息環境の悪化などで1994年度から国の狩猟禁止対象となり、環境省のレッドデータブックで絶滅の恐れのある地域個体群とされている。県も奥山で捕獲した分は殺処分せず、放獣する。
NPO法人日本ツキノワグマ研究所(広島県廿日市市)の米田一彦理事長(73)は「保護が進んだため頭数が増加した。駆除に向けて方向転換を図る必要がある」と指摘する。
21年の捕獲頭数は10月末現在で139頭。過去最多だった前年の約半分だったものの、10月に益田市久々茂町の市道でランニング中だった市内の50代男性が襲われるなど2件の人身被害があった。
7日の県議会本会議で福井竜夫議員(自民党議員連盟)の一問一答質問に答えた県農林水産部の西村秀樹部長は、当面は人とクマのすみ分けを図るゾーニング管理を徹底する考えを示し「人里に出没するクマを有害捕獲し、人身被害の防止に務めたい」と述べた。県は調査を分析し、22年度から5カ年で策定中の次期保護計画に反映させる考え。
(原田准吏)