国会議事堂の中央玄関に「開かずの扉」がある。ブロンズ製で重さは1枚約1トンあり、開くのは年に数回程度。その1回、天皇陛下をお迎えする国会の開会式が先般あり、衆院選後初の本格論戦が始まった▼岸田文雄首相は所信表明で自身がキャッチフレーズとする新しい資本主義の主役を「地方だ」と強調した。ただ、どうだろう。方策を議論する当の国会は、主役であるはずの地方の声が十分に届く体制にない▼都市一極集中と地方の人口減で「1票の格差」は広がり続け、国会議員はさらに偏在へ向かっている。国勢調査の結果を受け次期衆院選では15都県で定数10増10減。地方からの声はより細ってしまう▼現状、格差を測る物差しは、議員1人当たりの人口だが、カバーする「面積」で比べてみると、東京(定数25)は1人当たり約90平方キロ、対する島根(同2)は約3400平方キロと実に40倍近い▼来夏の参院選も引き続き山陰は合区だ。今は比例代表の特定枠を使い〝裏技〟で県代表を確保しているにすぎない。合区が他県へ広がれば都合よく県代表を死守できなくなるが、国会議論に進展はない。選挙制度に詳しい細田博之衆院議長(島根1区)は国会開会式で重要課題に対し「速やかに審議を行い必要な施策を講じる」と述べた。間違いなく重要である議員偏在の解消について、議論の扉がいつまでも〝開かず〟のままでは困る。(築)