ふんわりとした肌触りに引かれ、少し値は張ったが1枚のハンドタオルを購入した。タグには境港産「伯州綿」使用とある▼師走となり、当地で収穫が終盤を迎えている。摘み取った綿は2~3週間乾かし、糸を紡ぐための綿繰りの作業が、年を越して2月ごろまで続くそうだ。復活プロジェクトに取り組む境港市農業公社に教わった。浜綿とも呼ばれ、藩政期から明治にかけて弓浜半島で盛んに栽培されたが、1896年の綿花の輸入関税撤廃を機に安価な海外産が大量に流入し、衰退の道をたどった歴史がある▼その当時の輸入品に、この綿も含まれていただろうか。中国の綿花生産の8割超を占める新疆ウイグル自治区産の「新疆綿」。少数民族ウイグル族の強制労働で生産されている疑いがあると問題視され、日本のアパレル各社は調達の見直しを迫られている。私たちが普段何げなく着ている綿製品が、実はそうだったということもあろう▼中国の人権侵害を巡っては、共産党元幹部との不倫関係を告白した著名女子テニス選手が消息不明となり、波紋を呼ぶ。北京冬季五輪が来年2月に迫り、米政権は人権問題を理由に外交ボイコットのカードを切った。追随する動きもある▼米中対立や経済安保、五輪マネーなどが背景で複雑に絡み合い、真相を見えにくくする。巨竜よ、どこへ行く。国際社会とつながる糸が切れてしまいそうで危うい。(史)