「ラジオ・スターの悲劇」は英国のバンド・バグルスが、音楽ビデオの登場で出番を失ったラジオ歌手を歌った切ない楽曲。50代以降の洋楽ファンなら多くが知る名曲だ。40年前の1981年に米国で音楽専門テレビのMTV(エムティービー)が始まったとき、この曲の音楽ビデオが第1号として流れたという皮肉な逸話が残る▼直訳すると「ビデオがラジオスターを殺した」となる題に、詩情を醸す邦題をつけた日本のレコード会社に拍手。外国の音楽や映画に親しんでいると翻訳の妙を感じさせる作品に時々出合う▼ことしの流行語大賞の一つで、国際オリンピック委員会のバッハ会長をやゆした「ぼったくり男爵」も秀逸だった。米有力紙に載ったBaron Von Ripper―off(バロン・ボン・リッパーオフ)を、本紙などに記事を配信する共同通信が訳した▼「たかり」「追いはぎ」「搾取」といった候補から「ぼったくり」に決めた翻訳の苦労を、訳した記者がインターネットの47ニュースサイトにつづっていた。英語をそのまま用いる、さらには英語もどきのカタカナ造語を使うのが好きな官公庁は見習ってほしいものだ▼さて、東京五輪の後始末は続き、都と国が赤字をどう穴埋めするかが焦点という。今度は札幌市が3千億円規模で冬季五輪を目指す。コロナ禍を経験した今、巨費を投じる五輪開催地の悲劇が心配だ。(輔)