きのうの本紙に載っていた「墓碑銘2021」で今年亡くなった著名人を見ると、ことさら喪失感が大きい一年だったと実感する。この世にいないことを受け入れ難い名前が並ぶ▼評論家の立花隆さん(4月30日、80歳)。1988年に出版されたルポルタージュ『青春漂流』(文庫版)の表紙にある「あらゆる失敗の可能性を見すえつつ、大胆に生きた人こそ、よく青春を生きたと、言うべきだろう」という言葉は今も心のど真ん中にある。来年も「知の巨人」から〝あちら側〟の世界を興味津々にのぞいてきたリポートが届きそうな気がする▼俳優の田中邦衛さん(3月24日、88歳)。ドラマ『北の国から』を通じ、窮地にある時、過ちをした時の振る舞い方を教えてもらった▼1970~80年代にプロ野球広島東洋カープの黄金時代を築いた元監督の古葉竹識さん(11月12日、85歳)。試合終盤、広島市民球場の薄暗いベンチの隅で顔を半分だけ露出した映像がファンを不安にさせた。追悼する評伝などで、グラウンド全体を見渡せる位置にあえて立っていたことを、不明ながら初めて知った▼自分にとって3人は親世代。その一つ一つの言動を自らの血肉にしようともがいてきた。近頃は便利で、ネットの動画で名場面を振り返ることができる。なおさらもういないという気がしない。年が明けたらきれいさっぱり忘れて、というわけにはいかないのだ。(万)