きょうは「七草がゆ」。朝、もう済ませた方もおられるだろう。正月は、おせち料理をはじめ、ご馳走(ちそう)続きで胃腸も疲れ気味。その疲れをいたわり、一年の無病息災を祈りたい▼毎年この日は「七草がゆ」が定着した江戸時代の暮らしに思いをはせる。セリ、ナズナ、ゴギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ(カブ)、スズシロ(大根)の七草のうち、ナズナは俗に言う「ぺんぺん草」の若菜。ハコベラはハコベとも言い、子どもの頃は小鳥の餌にした野草だ▼「飽食の時代」といわれる今と比べると粗食にしか映らない。ただ江戸期の野菜栽培は腹の足しになる豆や根菜類が中心。葉菜には野草も利用された。もちろん電気やガス、水道はなく冬は寒さも大変だったと思う。そんな中ですする熱い「かゆ」は体や心を芯から温めたことだろう▼肉食が解禁されたとはいえ明治以降の「食」も大差はなかった。「米足らで粥(かゆ)に切りこむ南瓜(かぼちゃ)かな」。島根県津和野町出身の森〓(匡の王が品、右に鳥)外が日露戦争従軍中に詠んだ句だ。昭和になっても前回東京五輪の前までは、わが実家も時々「芋がゆ」の世話になっていた▼幸い「かゆ」には心身を健康に保つ効能がある。『養生訓』で知られる貝原益軒は、食への感謝に思いを巡らす「五思」を説いた。その一つは飢餓に苦しんだ大昔を思うことだ。せめてきょうは、命をつないできた「かゆ」に感謝しながらいただこう。(己)