今回は「寅(とら)年」にちなんだ簡単な酒のつまみのを一つ。「竹虎」と「雪虎」という名前をご存じの方もおられると思う。網で焼いた厚揚げを適当な大きさに切り、竹に見立てた青ネギの細切りをのせたのが「竹虎」。ネギの代わりに雪を思わせる大根おろしをかけると「雪虎」になる▼いずれも厚揚げに付いた焼き目を、虎の縞(しま)模様に見立てた呼び名で、醤(しょう)油(ゆ)をかけていただく。江戸時代は庶民の酒のつまみだったらしい。美食家として知られる北大路魯山人(ろさんじん)は『夏日(かじつ)小味(しょうみ)』と題した随想の中で、「雪虎」を夏向きの一品として紹介。「朝、昼、晩の、いずれに用いてもよい」としているから、おかずにもなる▼一方、魯山人が冬向けとする「竹虎」の名前は、江戸時代の絵師が描く虎の絵には、竹が付きものだったからのようだ。「猫でない証拠に竹を書いておき」という当時の川柳も残っている▼ついでに言えば、酒のことを女房言葉で「ささ」と言ったことから、笹(酒)の中にいる虎、つまり「酔っ払い」のことを「トラ」と呼ぶようになったとの説がある。他にも諸説あるが、個人的には一番しっくりくる▼さて、手軽に作れるつまみの準備ができれば、週末も近い。ついつい飲む話が多くなって恐縮だが、魯山人になったつもりで、伝統の味を楽しむのもいい。ただし、いくら「寅年」とはいえ、「大トラ」にならないようにご注意を。(己)