人を見掛けで判断してはいけないが、テレビでウクライナ侵攻のニュースを見ていると、どうしても「悪役」に見えてしまう。ロシアに20年以上君臨するプーチン大統領のことだ▼もともと一癖も二癖もありそうな人物との印象はあった。安倍晋三元首相の時代に、何度も何度も首脳会談を重ね、一時はメディアが北方領土問題の前進を期待させたことがあったものの、結局は期待外れ。安倍元首相が手玉に取られたような感じで、やはり一筋縄ではいかなかった▼ロシアは旧ソ連の時代から伝統的に計略や交渉術が巧みで、気が付くと相手が大幅な譲歩に追い込まれるとされる。加えてプーチン氏は柔道の愛好家。寝技や引き分けに持ち込む術(すべ)も承知しているのかもしれない▼しかし今回の軍事侵攻では、ウクライナの抵抗と国際社会の批判の強さをどこまで想定していたのか。柔道好きなら「柔よく剛を制す」の言葉を知らないわけはないだろうにと思う。状況判断を見誤ったとすれば、焦りがあったのか。それとも「策士策に溺れる」なのか▼権力の座に長く座っていると、力を過信して世の中が見えなくなったり、ブレーキが利かなくなったりする。今回の侵攻のように「悪役」の度が過ぎれば、何の罪もない隣国の国民から大勢の犠牲者が出るのはもちろん、金融制裁など、国際社会で国自体が「のけ者」扱いされて、自国民も被害者になる。(己)