韓国の次期大統領に就任する保守系最大野党「国民の力」の尹錫悦(ユンソンニョル)氏の愛読書は、米国の経済学者フリードマンが書いた『選択の自由』だという。フリードマンといえば、自由主義の旗手として知られ、ノーベル経済学賞を受賞したこともある。経済活動はできるだけ民間に任せ、政府が出しゃばってはいけないと「小さな政府」を説いた論客としても有名だ▼保守と革新が代わり番このように政権交代する韓国政治。「情緒民主主義」と呼びたくなる感情を隠さない国民性を背景に、大統領選は激しい非難の応酬を繰り返してきた。今回も「負けた方が監獄行き」と言われるまで非難合戦がエスカレート。歴史的僅差で保守が制したが、新政権は少数与党になる▼革新系の文在寅(ムンジェイン)政権では元慰安婦、元徴用工、佐渡金山の世界文化遺産登録など歴史認識を巡り日韓関係は最悪となり、韓国が実力支配する竹島(島根県隠岐の島町、韓国名・独島(トクト))に韓国の警察庁長官が上陸するなど日本の立場を逆なでする▼政権が代わるたびに日本との約束がほごにされては、国家間のまともな交渉はできない。「歴史は繰り返される」が、「蒸し返し」は歴史の進歩を阻む▼フリードマンに感化されたリーダーなら、出しゃばる政府から控えめな政府に転換するかもしれない。ただし、それは経済の世界。竹島問題では韓国に代わり日本政府に出しゃばってほしい。(前)