東京都庁前に米粒のように並んだ市民ランナーに違和感を持った。6日に開催され、約1万9千人が走った東京マラソンのスタートの様子だ。政府による新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置期間中だった▼これに翌日の記者会見で「世も末だ。誰が感染拡大防止に協力してくれるのか」とかみついたのが丸山達也島根県知事。部活動の制限や修学旅行の延期を余儀なくされ、我慢を強いられる子どもたちに説明が付かず、人流抑制などの要請を聞き入れてもらえないとの懸念を示した▼丸山知事が東京都の対応を疑問視するのは、東京五輪聖火リレーの中止検討を引き合いに出した頃から変わらない。都市部の感染拡大が、医療体制の脆弱(ぜいじゃく)な地方へ波及するのを恐れることが背景にある▼その言葉が小池百合子都知事や岸田文雄首相に届いているとは言い難い。まん延防止措置は21日で解除され、観客制限なしでプロ野球が開幕。都内では再び感染増加の兆しが見える▼ウイルスを巡る評価は世論を二分する。感染拡大防止と社会経済活動のどちらを重視するのか、答えを導き出すのは容易ではない。ただ、立場や考えを互いに理解する姿勢が乏しいままでは分断は深まる。それは抱える事情が違う都市と地方の関係にも通ずるのではないか。新しい国の形が模索される中、対立構造が続くだけならば、コロナ後の東京一極集中是正は程遠い。(吏)