参院選は6月22日公示―7月10日投開票が予定される。その公示まで2カ月を切った。政権発足から夏で約9カ月になる岸田政権に対する重要な中間評価の機会となる。

 連立政権を組む自民、公明両党はほぼ全ての候補者を決め、態勢を整えている。これに対して立憲民主党をはじめ野党側は候補者の擁立が遅れている。さらに野党の間が分断状態で、勝敗の鍵を握る全国32の改選1人区での候補者調整は進んでおらず、与党に厳しく迫る構図になっていない。

 新型コロナウイルス感染症に加え、ロシアのウクライナ侵攻で揺らぐ国際秩序、急速な円安と物価上昇など国内外に課題が山積する。緊張感のある国会論戦を通じてこれらの課題へ対応策を見いだしていくのが健全な議会制民主政治の在るべき姿だろう。野党には行政監視の役割もある。

 与党に迫るために選挙区によっては野党が共闘する必要もある。早急に選挙戦術を練り直し、有権者の受け皿となる選択肢を示すよう求めたい。

 参院選は改選1人区と複数区に比例代表が加わる複雑な選挙制度となっている。野党各党が自らの勢力拡張を目指すのは政党として当然のことだ。ただ、改選1人区では、野党が別々に候補者を立てれば与党を利するだけになる。

 2016年と19年の過去2回の参院選では主要野党が32の改選1人区で候補者を一本化して一定の成果を上げた。今回も立民の泉健太代表が共産、れいわ新選組、社民の各党首に候補者調整を要請、国民民主党とも協議しているが、一本化は進んでいない。

 問題なのは政権にどう対峙(たいじ)するのか、各党のスタンスが不明確なことだ。立民は泉代表の下、対決型から政策立案型へと路線転換を表明したが、それを選挙でどう訴えるのかは、はっきりしない。昨年の衆院選で共闘した共産党との関係も整理できておらず、改選1人区では候補者の調整が続いている。

 野党分断を招いた最大の責任は国民民主にある。政府の当初予算に賛成し、自民、公明両党と燃油価格高騰対策を協議した。国民が予算賛成の理由に挙げたガソリン税の一部を減税する「トリガー条項」の凍結解除は先送りとなったが、3党協議は今後も続けるという。

 その一方で玉木雄一郎代表は「われわれは野党だ」と主張している。政権に対してどういうスタンスをとるのか。有権者が理解できるよう説明すべきだ。

 共産は昨年の衆院選で立民と合意した「限定的な閣外からの協力」という方針の堅持を求め、立民との協議は進んでいない。その結果、改選1人区の香川や宮崎では立民、国民、共産が別々に候補者を立てる状況になっている。立民と国民の支持組織、連合も分断状態に陥っている。これでは力を発揮できまい。

 日本維新の会は次期衆院選で野党第1党となって政権交代を目指すとしており、参院選では比例代表で立民を上回ることを目標に掲げる。政権に対しては政策ごとに賛否を決める是々非々で臨むとしているが、その判断基準は何なのか。これも有権者への丁寧な説明が必要だ。

 各党が党利党略に走り、結果として与野党の議席数の差が開けば、政治からさらに緊張感が失われかねない。大局に立った判断を各党に求めたい。