水資源の大切さを説いたジャーナリスト俊成正樹氏の『日本から水がなくなる日』(中経出版)は、このような文章で始まる。「日本は、水が多い国でしょうか? それとも少ない国でしょうか?」▼答えは「少ない」。雨は降れども、国民1人当たりが使える資源は世界平均の半分程度になる。2009年に出た本の主要参考文献が自民党の特命委員会「水の安全保障研究会」の最終報告書。世界で水の争奪戦が起こる可能性を指摘。食糧やエネルギーとともに守らねばならぬ資源とし、日本の上下水道技術の輸出を提言した▼07年末から08年にかけて特命委の事務局長を務めたのが島根2区選出の竹下亘衆院議員。A4用紙690ページ余りにわたる報告書の取りまとめを担った。当時は参院で野党が多数を握る「ねじれ現象」が起こり、次期衆院選で政権交代が懸かる一大政局。東京での裏方仕事よりも、選挙に備え地元に長くいた方がいいとされる空気にあった▼報告書がまとまる頃、会見で今この問題に携わる意義を聞くと、「国内の水問題に目配りしたい」と語った。森林の水源維持や水道管の老朽化など危機はむしろ地元にあるとみていた▼あれから10年以上がたった。水源や水道インフラを守るのは人間。地方で人口が減り、問題は深刻の度合いを増している。昨秋逝去した氏の未完の志を、地方選出の国会議員がどう引き継ぐか見届けたい。(万)