先月亡くなった「ぞうのエルマー」シリーズで知られる英国の絵本作家デビッド・マッキーさんの作品に『せかいでいちばんつよい国』という一冊がある。原題は『THE CONQUERORS』(征服者たち)。連日、惨状が伝えられるウクライナ侵攻とは対極にある物語だ▼「世界中の人々を自分たちと同じように、幸せにするため」に「大きな国」の大統領が次々と戦争を仕掛ける。とうとう征服していないのは「小さな国」一つになった。その国には軍隊はなく、攻めてきた兵隊たちをお客のように歓迎する。すると兵隊たちの気持ちや行動は変わっていき、最後は「大きな国」の人たちが「小さな国」の文化に染まっていく▼徹底抗戦を続けるウクライナの人々と容赦のないロシアの攻撃を見せられると、絵本の世界とはいえ現実離れした展開に思える。ただ怒りや憎しみは戦闘を激化させ、泥沼化につながりやすい▼真の平和や幸せは戦争では得られないことを教えるこの絵本の原書が出版されたのは2004年。ちょうど米国や英国が「大量破壊兵器」の保有を口実に「悪の枢軸」と呼んでイラクを攻撃、フセイン政権を崩壊させた翌年のことだ。この戦争は平和や幸せをもたらしたのだろうか▼軍事力を誇示し、戦争を繰り返す大国が本当に「世界で一番強い国」なのか-。こんな時代だからこそ、子どもたちにはぜひ考えてほしい。(己)