ロックバンド「THE BOOM」の宮沢和史さんが沖縄の情景を歌った『島唄』がヒットした30年前、沖縄音楽の歌い手として本土で活躍したのが、女性4人組の「ネーネーズ」だった。民放の深夜のニュース番組の挿入歌として流れていた『黄金(こがね)の花』に引かれて、曲が収録されたアルバムを買った▼詞を書いたのが米子市出身の故・岡本おさみさんだったことは、当時は知らなかった▼<黄金の花が咲くという 噂(うわさ)を夢で描いたの 家族を故郷(ふるさと)、故郷に 置いて泣く泣く出てきたの>。外国人労働者として日本へ出稼ぎに行った家族を思う歌詞は、直線的で心に響く。沖縄の県紙である琉球新報には、岡本さんの構想と詩が先にあり、旧知だった沖縄音楽界の大家・知名定男さんが曲を付けた経緯が記してある▼記事を引用すると、岡本さんが「説教じみた歌詞だが、残して置きたい詩」と温めていた詩が、4人組との出会いによってプロデュースしていた知名さんへの詩の提供へとつながり、沖縄発で世に出た▼2番までの詩はこう締めくくられる。<黄金で心を捨てないで 本当の花を咲かせてね>。沖縄では黄金のことを「くがに」と読み、「黄金言葉」とあるように、大切な光輝くモノという意味があるという。それがお金ではないことは明白だ。沖縄の本土復帰50年に当たり、山陰と沖縄の融合で名曲が生まれたことを改めて誇りに思う。(万)