青森県津軽地方の南端に位置する大鰐町(おおわにまち)のお話。古くから伝わる冬野菜「大鰐温泉もやし」に付着する菌が、脳卒中を予防し、血糖値を抑えるという画期的な研究成果が発表されたそうな。新型コロナウイルスの感染も防ぎ、菅義偉首相(当時)も「さ・すが」と絶賛したとかしなかったとか…▼といっても、もやしの他は真っ赤な嘘(うそ)。昨年6月に同町であった「第25回万国ホラ吹き大会」で仙人(1位)に選ばれた笹沼正悦さんの作り話である。「まさか」の後に来る結末は「やっぱりね」。罪のない「ホラ」は微笑(ほほえ)ましく、罰は当たらないだろう▼町内には「石の塔」と呼ばれる高さ24メートル、周囲74メートルの自然現出した一塊の巨石が存在する。その大きな故に、津軽地方には『石の塔見ねうぢ、でっけぇごとしゃべらいねぞ(石の塔見ないうちは大きなことは言えないよ)』ということわざがあり、これを基に、ホラ吹き大会が生まれたという▼石の塔への参詣登山を行い、「大法螺(おおぼら)吹き免許証」を受けた県内外の参加者は、1人5分の持ち時間で自慢のホラを披露。会場は笑いの渦に包まれ、振る舞われたもやし汁をこぼしてしまう来場者も多いらしい▼今年もコロナ禍で昨年に続いて事前録画での審査となり、近く結果が発表される。とかく世知辛い世の中だからこそ、こんなにばかばかしく罪のないホラ吹きイベントが山陰にあっても、罰は当たるまい。(健)