公示が目前の参院選。争点の一つが「ヤングケアラー対策」だ。日常的に家族の世話や介護をする18歳未満の子どもを指す言葉として定着した▼各政党が昨秋の衆院選から継続して重要課題に位置付け、子どもの学びや就労、さらに踏み込んで家庭全体への支援策の必要性をうたう。鳥取県では国に先んじて、対策を促す支援条例制定の準備が進む▼鍵を握るのは支援の仕組み作りもさることながら、実態に気付き支援につなげる現場力。島根県内では、学校に関わるスクールカウンセラー、社会福祉士や大学教授らが連携して当事者を支援する一般社団法人「ヤングケアラーサロンネットワーク」が動き出した▼家族なら助け合うのが当然-。「孝」を核とした思想が根強い社会だから、問題は簡単に目の前に現れない。ましてやケアラーが小学生の場合、客観的に状況を説明するのは困難。子どもの健康状態、出席状況、成績や会費の納入に至るまで、さまざまな断片情報を組み合わせ「もしかしたら…」と思えるかどうか▼そして、その時にどのような声かけをすればいいか。ネットワークのメンバーに聞くと、長く携わるほどそれが一様でないことに気付き、考えるという。結局、子どもが話しやすい雰囲気づくりに尽きる。「雨垂れ石を穿(うが)つ」の心境だ。そんな現場の努力に報いるためにも、県や県教委による全県の実態調査が必須だと感じる。(万)