棋王戦コナミグループ杯で女性初の本戦進出を決め、笑顔の里見香奈女流四冠=5月27日午後、大阪市の関西将棋会館
棋王戦コナミグループ杯で女性初の本戦進出を決め、笑顔の里見香奈女流四冠=5月27日午後、大阪市の関西将棋会館

 1996年放送の連続テレビ小説『ひまわり』が夕方に再放送されている。90年代の世相がよく分かる現代劇。松嶋菜々子さん演じるヒロインが仕事か結婚か二者択一を迫られる姿に驚く半面、そんな風潮だったなと思い返す。男女差や役割ががっちり決められていた印象だ▼今も同じとみる向きもあるが、さすがに先月末、将棋の里見香奈女流四冠が女性初のプロ棋士編入試験の受験資格を得たニュースで変化を感じた。結果次第で「女流」の2文字が取れて、男性と対等になる▼愛棋家はよく「将棋は体力が関係ないのに男性が強いのはなぜ」と問われたはず。将棋と比べ、囲碁は女流棋士が男性相手に勝っていたので「将棋の方が激しく、女性は優しいので向かない」と言われた▼だが今では都市伝説のようだ。勝負事は全て激しく囲碁も穏やかではない。それでも清少納言や紫式部も好み、将棋より楽しむ女性が多かった。男性と比べればどちらも女性の競技人口が少なかったので、男性優位の理由は結局、裾野の問題に帰結するに違いない▼プロ将棋の歴史が400年超あるのと比べ、女流棋士誕生は1974年と日が浅い。その頃は女性の物腰の柔らかさ、細やかさによって将棋を普及させるのが狙いで、強さに期待したわけではなかろう。そんな見方も含めて、里見女流四冠が女性が抱かれがちな大いなる固定観念を破りそうな位置に来た。(板)