故中曽根康弘元首相と石破茂首相には共通点がある。「戦後政治の総決算」を掲げた中曽根氏は、少数派閥を率いながらも「三角大福中」と呼ばれた権力闘争を生き抜き、機が熟すまで待ち続けて自民党総裁に上り詰めた。非主流派だった石破氏も5度目の挑戦で勝利した。
約5年の長期政権を築いた中曽根氏は「風見鶏」と言われる一方、国鉄の分割・民営化などを推し進めた。若い頃から「首相になったら何をするか」を書きつづった大学ノートは30冊に上るという。
片や約1年の短命に終わる石破政権の行く末は首相就任直後に決まったかもしれない。否定していた解散総選挙に踏み切り、派閥裏金事件に関与した議員の一部を公認し大敗。貫いてきた物言う姿勢、世論の近さは鳴りを潜めた。政権を担う準備はできていたのか。本当は何がやりたかったのか。そう思ってしまう。
小泉純一郎元首相が「自民党をぶっ壊す」と叫んだのは24年前。党内の考えの違いもエネルギーに変えてきた国民政党は今、分断が進む。将来、石破政権は党分裂の序章だったと振り返る時が来るかもしれない。
かつて妻の「ふらふらしてはいけない」との言葉が決め手となり、意欲があった鳥取県知事選への立候補を見送り、今回は菅義偉元首相らから促されて退陣を決めた。窮地に頼った「石破カード」は空を切り、ぶれないことが強みだった石破氏は風見鶏になった。(添)













