風になびく短冊と女の子(資料、魚眼レンズ使用)
風になびく短冊と女の子(資料、魚眼レンズ使用)

 台風の影響が心配だが、あすは七夕。子どもが巣立ってしまうと、ササ飾りを作ることも、織り姫とひこ星の話をすることもなくなった。願い事を書いた短冊に通す「こより」は、もう20年近く作っていない▼よく知られた七夕伝説では、織り姫(こと座のベガ)とひこ星(わし座のアルタイル)の夫婦は1年に1度、七夕の日にしか会えない設定。間には天の川が横たわる。2人、つまり二つの星の間の現実の距離は、科学的に計算すると約15光年になるそうだ▼光の速度は秒速約30万キロだから1光年は約9兆5千億キロ。その15倍も離れている2人は、まさに「超遠距離夫婦」。ちなみに地球から月までの距離は約38万キロだ▼15光年も離れていると、科学的な計算では、残念ながら実際に毎年会うのは難しい。意思疎通も大変で、仮にメールやLINE(ライン)があったとしても、返信が届くのは30年後になる。七夕伝説のように夢やロマン、理想と現実の間には乖離(かいり)がある▼5年前の七夕の日に国連で採択された核兵器禁止条約もそうだ。米国の「核の傘」に頼る日本は理想をうたう条約には参加せず現実的な道を探る。ただ理想と現実の間の距離も、宇宙のスケールから見れば狭い地球上でのこと。15光年に比べると乗り越えられない距離ではないはず。織り姫とひこ星も、天の川が渡れなくて涙を流す「催涙雨(さいるいう)」の年があっても諦めていない。(己)