「だまっとれん。」―広島県選挙管理委員会が掲げたキャッチコピーが話題となった参院選広島選挙区の再選挙が終わった。大規模な買収事件で有罪が確定した河井案里元参院議員の当選無効に伴う選挙だっただけに、投票率向上を狙った強烈なメッセージが有権者の心に響いたと信じたい▼こちらは「静かにして」と願う市民の心に刺さったようだ。41人が定数34の議席を争う激戦となった18日投開票の松江市議選で選挙カーを使わない活動に徹した女性の新人候補が初当選した▼主張は大通りでの演説とインターネット上で発信。騒々しく住宅街を駆け巡る従来型の選挙を迷惑がる子育て世代から次第に応援メッセージが届くようになったという▼選挙カーから候補者名を連呼する日本独特の選挙スタイルは古今東西、評判が悪い。にもかかわらず改められないのは、「べからず法」と揶揄(やゆ)される公職選挙法が選挙運動を細かく制限しているからだ。走行中の車からの演説が禁じられ、結果的に選挙カーからは候補者名だけの連呼になっている▼買収の温床になるとして「戸別訪問」が禁止され、その代わりに広い地域を移動しながらアピールできる選挙カーが導入されたらしいが、名前だけで一票を託す気にはならない。落ち着いた環境で候補者の訴えと資質を吟味できれば関心を抱く人も増えよう。そろそろ選挙ルールを改めてはどうだろうか。(文)