ふるさと納税制度の利用が増えている。総務省によると、2021年度の寄付総額は過去最高を更新。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要で8300億円を超えた▼寄付を多く集める自治体に共通するのは肉、魚介類、果物といった返礼品の存在。その中で、派手さのない「水」を売りに寄付額を前年度の3・5倍に増やした異色の自治体が、大山の南麓に位置する鳥取県江府町だ。19年度はわずか1500万円、20年度も1億3千万円だった寄付額が、21年度は4億8千万円を突破した▼奥大山を水源とする天然水はサントリーが商品化。歌手の宇多田ヒカルさんを起用したテレビCMで全国区になった。この恵まれた資源に着目した町は専任職員を置き、インターネットの掲載サイトを大幅に増やして見せ方を改善。迅速な発送態勢で、寄付者の心をつかんだ▼さらに注目すべきは寄付の使途だ。学校給食の無償化、オンライン授業に使う各家庭のネット料金の全額補助、SDGs(持続可能な開発目標)教育の拠点整備などに充当。年間予算規模が40億円の町では二の足を踏む「未来への投資」が可能になった、と白石祐治町長は説く。変わったところでは、職員発案の町報のフルカラー化も実現させた▼今も高額な返礼品競争が問題になる制度だが、正攻法でも十分に寄付者の共感は得られる。要は、まちの魅力の伝え方と使い道の工夫次第だ。(文)