重吉伸一さん(左)が指導する居合術の様子=松江市古志原4丁目、松江工業高校の剣道場
重吉伸一さん(左)が指導する居合術の様子=松江市古志原4丁目、松江工業高校の剣道場

 松江市内で40年余り柔術や居合術といった武道の指導を続ける同市鹿島町名分の重吉伸一さん(64)がこのほど、武道のさらなる普及や古武術の復興を目指し、NPO法人「重吉伸一サムライ道場」を立ち上げた。教育や健康にも焦点を当てた事業を計画。「後世に武術を残したい」と意気込む。 (山本貴子)

 重吉さんは北九州市出身。中学生の頃は独学で、高校生の頃から空手の道場で武道を学んだ。「強さ」へのあこがれで始めたが、次第に礼儀作法や人の心を育てる奥深さのとりこになった。

 空手や居合術など複数の武術を身に付け、くにびき国体に出場するため1981年に島根県にIターン。その後は仕事の傍ら指導に当たってきた。

 教え子は千人を数え、日本国内にとどまらず、米国やイタリアなど世界各地にいる。地道な活動の手応えを実感するとともに「還暦が過ぎ、武道に人生をささげたいとの思いが強くなった」という。

 指導の範囲を超えて多角的に普及するよう、7月にNPO法人を設立。今後、武術の動きを取り入れた健康体操の普及や、武道の礼儀作法を取り入れた教育に取り組む。

 松江藩で盛んだった不伝流居相(居合)、直信(じきしん)流柔道、一指流管槍(くだやり)、樫原流鍵槍、新当流剣術の五つの古武術の復興・保存も目指す考え。重吉さんは「武道を世界に広め、松江の文化も残したい」と語る。