2025年秋の新庁舎完成に向けて急ピッチで進む松江市役所本庁舎の建て替え工事について、資材価格の高騰を受け、見込んでいた総事業費150億円がさらに膨らむ見通しとなっている。具体的な額は精査中で、市は次回の市議会11月定例会で増額分の補正予算を組む方針。建て替えを巡っては巨額の事業費を疑問視する声が上がった経緯があり、今回の増額は外的な要因とはいえ、市には説明が求められる。
市によると、新型コロナウイルスやウクライナ危機による工場の生産力低下や原油高などの影響を受け、建設資材が値上がりし、総事業費が膨らむのは確実という。上定昭仁市長は市議会9月定例会の代表質問で「受注者との協議が整えば、次回の議会で増額分の補正予算を審議していただく」と答弁した。
本庁舎建て替えは、試算段階で120億円と示された総事業費が150億円に膨らんだことなどへ疑問の声が上がり、市民団体が2020年9月、約1万4千人分の署名を集めて住民投票条例の制定を直接請求。市議会が否決したものの、総事業費は関心が高く、市新庁舎整備課の高見保志課長は「さまざまな方法で事業を知ってもらい、理解を得て進めていきたい」と話している。
このほか、主に公用車が使う駐車場の整備は、敷地の一部が県の放水路整備事業にかかっており、調整のため全体の事業完了は想定していた27年春からずれ込む見通し。25年秋という新庁舎完成時期に影響はないという。
新庁舎は地上6階、地下1階の免震構造で、延べ床面積は約2万5千平方メートル。2~6階にテラスが段々状に張り出す外観を採用し、駐車場は現在より50台多い計412台分を設ける。
南側半分を造る1期工事は21年春に始まり、一部で日曜日も使いながら急ピッチで作業。くい打ちや鉄骨の組み立てが終わり、今後は屋根や内外装、配線整備を進める。現庁舎からの移転を経て23年5月に開庁。その後、2期工事を始め、現庁舎を解体した上で、残る半分の建物を建設する。
(片山大輔)