「みんなでひきこもりラジオ」の直近放送のエピソードを紹介するNHKのホームページ
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 何げなくつけたカーラジオに思わず聞き入った。NHKラジオ第1の「みんなでひきこもりラジオ」。2年前に始まり、今年5月から毎月第1金曜日にレギュラー放送している、ひきこもり当事者の声でつくる番組だ▼「歯医者に行きたいが人が怖い」「自分が妖怪になっていくようだ」「この番組を聴いて逆に孤独を感じる」…。寄せられる声は10~60代まで地域もさまざま。内閣府の調査では、ひきこもりの人は全国に推計115万人。長期化、高齢化が進み、80代の親と50代の子が孤立する「8050問題」も深刻になっている▼つらい声が多いが、重い雰囲気の番組ではない。進行役の男性アナウンサーは「そんなことないですよ」などの優しい否定も、「頑張りましょう」という励ましもしない。ただ「声を寄せてくれて、ありがとうございます」「また送ってくださいね」。あっという間の50分だ▼聞き入ったのは、どこかで頑張り過ぎたり無理したりする自分がおり、共感できる部分があるからだろう。自らを偽って生活するのではなく、引きこもることで自分を守れるのであれば、その行動を否定するべきではないと思う▼ただ、救いを求める手を握る術(すべ)は、社会にあってほしい。番組は決まり文句で終わる。「生きて、また会いましょう」-。孤立しない社会へ、当事者の声がヒントになるならば、ラジオを通してまた会いに行こう。(衣)