先日、米大リーグの大谷翔平選手(28)がエンゼルスと1年3千万ドル(約43億5千万円)で来季の契約に合意したとの記事が載った。1ドル=145円の計算だ。1年前だったら為替相場は1ドル=110円程度。円換算すると33億円で、このまま円安が続くと10億円以上の違いが出る▼お金を米国で使う場合はほとんど関係ないが、大谷選手がもし日本で買い物をすれば、円安は思わぬ「恩恵」になる。もっとも2年続きで最優秀選手(MVP)級の大活躍を日本のファンにも見せてくれたのだから、その程度の「ご褒美」では足りないくらいだ▼円安の影響はメリットもデメリットも金額が大きいほど顕著になる。気になるのは防衛装備品の調達。例えば2年前に米国が日本への売却を決めた最新鋭のステルス戦闘機105機の合計額は、その後のサポートなども含めて約231億ドル。為替相場を反映して支払いレートが10円変われば大きな違いが出る規模だ▼米国製の高額な装備品を調達する「対外有償軍事援助(FMS)」はドル建ての契約で、契約年度と支払い年度でもレートの違いが生じ、円安が進むと割高になる▼政府は来年度から向こう5年間の防衛費を計40兆円超にする方針と伝わる。その財源を増税で賄うにしろ、「つなぎ国債」にするにせよいずれ負担するのは国民。それだけに目算違いが生じないよう中身も時期もしっかり吟味が必要だ。(己)