中村元さん
中村元さん
中村元記念館に再現された中村さんの書斎=松江市八束町波入
中村元記念館に再現された中村さんの書斎=松江市八束町波入
中村元さん
中村元記念館に再現された中村さんの書斎=松江市八束町波入

 本欄の右斜め上にあり、きょうで2480回を迎えた「中村元 慈しみの心」について、読者から「中村げんさんの…」と問い合わせを受けることがある。愛読者にも「はじめ」と読む中村元さんのことはよく知らない人もいそうだ。釈(しゃ)迦(か)に説法とも思いつつ記念館開館10周年と生誕110年の記念式典が先週末に松江市内で催された機会に改めて記したい▼思想研究に生涯をささげたインド哲学、仏教学の世界的権威で岩波文庫『ブッダのことば』など著作は多数。1912年松江市に生まれた。母親の実家があった殿町で産声を上げ、中村家は奥谷町にあった。1歳の時に東京に移ったが、古里松江を終生愛した。99年に86歳で亡くなった▼生誕100年の2012年、命日の10月10日に中村元記念館が松江市八束町の市八束支所に開かれた。大根島に特別な縁があるわけではないが、古里待望の顕彰施設。寄贈された蔵書3万4千冊を管理し、書斎を再現する▼本紙「慈しみの心」は15年11月1日に始まり8年目に入った。中村さんがブッダの言葉を意訳し、大切にした「慈しみの心」を伝えるため、直接指導を受けた研究者がつづる。今の服部育郎さんは4代目執筆者だ▼式典では記念館について長女の三木純子さんから「父の全てが保存されている」と祝辞が届いた。心穏やかになれる場所である。まだの人は秋の行楽に合わせ、訪ねてほしい。(輔)