ソウルの繁華街・梨泰院で発生した事故で、多くの救急・消防隊員が集まり騒然とする現場周辺=10月29日(ロイター=共同)
ソウルの繁華街・梨泰院で発生した事故で、多くの救急・消防隊員が集まり騒然とする現場周辺=10月29日(ロイター=共同)

 9年前、その近くを訪れた記憶をたどると、駐韓米軍基地(当時)に寄り添うように、狭いながらもしゃれた酒場が軒を並べる大人の魅力を放った所だった▼痛ましい圧死事故が起きたソウル龍山(ヨンサン)特別区にある梨泰院(イテウォン)。韓国の公共放送KBSの紹介記事によると、14世紀末に始まる(李氏)朝鮮時代から現在まで「異邦人」の街であった、とある。2000年代後半ごろには梨泰院で、米国や日本経由によりハロウィーンに人が集まる文化、習慣が定着したといわれているが、数年前に留学していた新聞社の同僚は、事故のように大勢が集まる雰囲気にはなっていなかったという▼こうした場所に身動きが全く取れないほどの人が集まることを警察など警備当局がどれほど予見できたかが、今後の検証や再発防止のポイントになるのは言うまでもない▼1カ月ほど前、日韓関係に詳しい韓国の専門家と話す機会があった。度重なる震災を経験した日本の減災、防災に向けた経験を隣国と共有することが大切だと指摘していた▼雑踏事故でも、01年に起きた兵庫県・明石花火大会の歩道橋で11人が亡くなった惨事を踏まえ、警察や行政がまとめた報告書がある。責任の所在を云々(うんぬん)するのは当然韓国の内政問題だが、再発防止に向けては、隣国同士の積極的な情報提供や議論があってもいいのではないか。それがひいては日本からの渡航者の安全確保にもつながる。(万)