「Y2Kファッション」が現代の若者に人気だという。Kは千の単位を表しており、Y2Kは「Year2000」の略語。2000年ごろに流行したヘソ出しルックにミニスカート、厚底靴などのファッションを指している▼当時は世紀末だった。空から恐怖の大王が降りてくるという予言がささやかれ、コンピューターが誤作動を起こすとされた「2000年問題」が騒がれたのもこの頃。大学卒業後も職に就けるか不透明で、就職につながりやすい進路を選んだ同級生も少なくない▼女子高生の間では、短い制服のスカートに長い靴下をたるませてはくルーズソックスが大流行していた。制服を着崩すことで、学校から自由を手に入れた気がしていたと思う▼哲学者の鷲田清一氏は著書『ひとはなぜ服を着るのか』で、服装は「そのひとの社会意識、あるいは他者たちのなかのじぶんというものの意識を、いやがおうにも映しだすもの」と説明する。服は本来、暑さ、寒さから体を守るもの。鬱屈(うっくつ)した時代に、主張しなければ埋もれてしまう危機感をルーズソックス姿に込めたのかもしれない▼あれから約20年。新型コロナウイルスの収束は見えず、ロシアのウクライナ侵攻による物価高騰が続く。Y2K時代に通じる閉塞(へいそく)感と不安感が若者の間に蔓延(まんえん)し、ファッションとして表れたのなら、あの時代を生きた大人として何ができるか自問自答する。(目)