花やメッセージが供えられた韓国ソウル・梨泰院の事故現場付近の歩道=ともに14日撮影
花やメッセージが供えられた韓国ソウル・梨泰院の事故現場付近の歩道=ともに14日撮影
事故が起きた梨泰院の現場
事故が起きた梨泰院の現場
花やメッセージが供えられた韓国ソウル・梨泰院の事故現場付近の歩道=ともに14日撮影
事故が起きた梨泰院の現場

 一夜にして多くの若者の命を奪った韓国ソウルの繁華街・梨泰院(イテウォン)の圧死事故。現場は、発生から半月が過ぎても多くの人が哀悼に訪れ、悲しみに包まれていた▼韓国出張に合わせて先日、凄惨(せいさん)な事故が起きた坂道に足を運んだ。幅は3・2メートル、長さは40メートルほどで、写真や映像で見る印象よりも狭い。ここで日本人2人を含む158人が亡くなったと聞いても、にわかには信じられなかった▼最寄りの地下鉄駅の階段には亡くなった家族、恋人、友人を悼むメッセージがびっしりと張られ、歩道は無数の花束で埋め尽くされていた。密集状態で人々が次々と転倒する「群衆雪崩」が起きたとみられ、立ったまま圧死した人もいたと報じられた。供えられた犠牲者の写真や、ゆがんだ鉄扉に残った手形を目にして、胸が張り裂けそうになった▼飲食店やクラブが立ち並ぶ一帯は、人気ドラマの舞台にもなり、若者に絶大な人気があった。22歳の娘が近くに住む50代女性によると、3年ぶりに新型コロナの規制が緩和され、ハロウィーン前の街は解放感に満ちていたという▼韓国社会を暗転させるほどの大惨事がなぜ起きたのか。二度とこのような痛ましい事故を繰り返さないために、どうすべきか。事故後、警察のずさんな対応が発覚し、政権批判に結び付ける動きが目立つが、悲劇を政争に利用する前に、犠牲者の冥福を祈り、原因究明に力を注いでほしい。(文)