乗用車内で女児が見つかった大阪府岸和田市内の駐車場=13日午前
乗用車内で女児が見つかった大阪府岸和田市内の駐車場=13日午前

 かつてのヒット曲の歌詞を思い浮かべて口ずさむ。デートの別れ際、彼の車が角を曲がるまで見送ると、<いつもブレーキランプ5回点滅 ア・イ・シ・テ・ルのサイン>▼この小さな男の子が車内から発したサインは、5回警笛の<ド・ア・ア・ケ・テ>だったろうか。あわやの場面でSOSは届いた。今月初め、岩手県一関市内の小学校に通う1年男児が通学バスに置き去りにされ、運転席のクラクションを鳴らして事なきを得た。もしものとき保護者からそうするよう教えられていたというから、あっぱれである▼9月には静岡県牧之原市の女児がこども園の送迎バスに放置され、熱中症で死亡する事故が発生。先日は大阪府岸和田市で、父親が運転して保育所に送る車に女児が取り残されて息絶えた。子どもの車内への置き去りがこうも後を絶たないのは、警鐘のクラクションが社会に響き渡っていないからだろう▼ならばテクノロジーの出番かもしれない。再発防止策として政府は来年4月から、通園バスに警報音などを使った安全装置の設置を義務付ける。電子部品メーカーなどでは、車内を検知するセンサーの開発も進められているという▼ただ、それとて万全ではあるまい。大事なのは、確認の安全網を二重にも三重にもかけること。<オ・イ・テ・カ・ナ・イ・デ>。声にならない声を聞き逃さない。そこは機械任せにはしたくない。(史)